一般社団法人新潟県建築士事務所協会
一般社団法人新潟県建築士事務所協会

建築作品

 優れた建築作品を設計した新潟県内の建築士事務所を表彰することにより、建築士事務所の資質の向上に寄与することを目的としております。

令和6年度 第33回「建築作品・新潟県賞」

講 評

審査委員長  
西 村 伸 也

 年度第33回となる「建築作品・新潟県賞」は、新潟県の優れた建築作品を設計した新潟県内の建築士事務所を表彰することにより、建築士事務所の資質の向上に寄与することを目的としています。審査委員は、西村伸也(新潟大学 名誉教授)・地濃茂雄(新潟工科大学 名誉教授)・高木実(一般財団法人にいがた住宅センター 理事長)・本間裕之(一般社団法人新潟県建築士事務所協会 会長)・砂塚秀知(一般社団法人新潟県建築士事務所協会 業務・技術委員長)の5名です。令和7年1月14日(火)午後1時半から審査が始まり、応募された5作品(一般建築部門2件、住宅部門3件)の審査が慎重に行われました。

 提出された応募資料を審査委員全員で精読した上で、各自がそれぞれの作品に30点を上限とした評価点をつけて、各応募作品の特徴と評価する点を慎重に議論しました。本年度は、5作品と少ない応募数でしたが、多様な魅力を持った質の高い建築作品が肩を並べて、審査員の評価も点差のつきにくい状況でした。その中で議論の結果、以下の2作品を「建築作品・新潟県賞」に値する建築作品であると選定しました。

最優秀賞 「白銀の家」 プラウム建築設計事務所
優秀賞 「ANOTHER STATION
小千谷さくら病院」
株式会社高田建築設計事務所

 微差で選外となった作品も、農と障害者のグループホームを巧みに繋げた作品、内部空間の構成と外部空間とのつながりを考えた作品、住まいと地域コミュニティとの関係を考えた、工夫に富んだ作品でした。日頃の設計活動の中で、大切な課題に向き合い空間としての解を提案した高い建築デザイン力を実感させられるものでした。そして、設計する作品が取り囲む環境に目が注がれている点が共通しており、変化している今という時の流れが強く感じられました。
 今年度の日事連建築賞への推薦作品は、小規模建築部門(延面積が1,000㎡以下の建築物:戸建住宅を含む)に「白銀の家」プラウム建築設計事務所と一般建築部門(延面積が1,000㎡を超え20,000㎡以下の建築物)に「ANOTHER STATION 小千谷さくら病院」株式会社高田建築設計事務所 の2作品を推薦することになりました。

建築作品講評

最優秀賞

白銀の家

プラウム建築設計事務所

 新潟の下町で町家に囲まれた細長い駐車場だった敷地に新たに住宅を建てる計画である。周辺の住民からのヒアリングを受けて、新しい家が建つことによる日当たりの減少を抑えるために、光沢のある外壁材を採用する丁寧な対応を行っている。町家に囲まれた細長い敷地に、入り口を洋室の奥の中庭から入るリビングアクセスの提案は、家の中の動線部分を短くして社会的空間を一階にまとめている。この中庭は、キッチンとリビングダイニングに柔らか陽を落とし、新鮮な空気を循環させるとともに、それぞれの空間を中庭介して繋いでいて、狭い空間に広がりと一体感を与える装置でもある。町家の集中している地区に特有な厳しい敷地条件に対して、家族の生活の豊かさと地域との優良な関係を実現できる空間が高く評価された。

優秀賞

ANOTHER STATION 小千谷さくら病院

株式会社高田建築設計事務所

 特殊疾患患者を受け入れる既存の小千谷さくら病院の改築で、既存の第一病棟と第二病棟を解体して、新棟をつくる計画である。入院患者・家族・医療従事者にとって居心地の良い居場所を目指して、個室的多床室の新しい提案を行っている。雁行させた4つの窓から、ベッドそれぞれに陽が差し込む細長い個室的4床室である。角度のついた窓とベッドが置かれる壁が暖かい色で区別されて、ベッドを視覚的に個室化する効果を生んでいる。この個室的4床室と従来の4床室が組み合わされて、1フロアー2看護単位の構成で効率のよい平面計画も実現されており高く評価された。