一般社団法人新潟県建築士事務所協会
一般社団法人新潟県建築士事務所協会

建築作品

 優れた建築作品を設計した新潟県内の建築士事務所を表彰することにより、建築士事務所の資質の向上に寄与することを目的としております。

令和5年度 第32回「建築作品・新潟県賞」

講 評

審査委員長  
西 村 伸 也

 今年度第32回となる「建築作品・新潟県賞」は、新潟県の優れた建築作品を設計した新潟県内の建築士事務所を表彰することにより、建築士事務所の資質の向上に寄与することを目的としています。審査委員は、西村伸也(新潟大学名誉教授)・地濃茂雄(新潟工科大学名誉教授)・高木実(一般財団法人にいがた住宅センター理事長)・本間裕之(一般社団法人新潟県建築士事務所協会会長)・渡辺文司(一般社団法人新潟県建築士事務所協会業務・技術委員長)の5名で、令和6年1月19日(金曜日)午後1時半から審査が始まりました。正月に発生したマグニチュード7.6の能登半島地震の混乱から、新潟では少し落ち着きを取り戻し始めており、耐震への建築デザインとしての対応も基準の一つとして強く意識しながら、応募された6作品(一般建築部門5件、住宅部門1件)の審査が慎重に行われました。
 提出された応募資料を審査委員全員で精読した上で、各自がそれぞれの作品に30点を上限とした評価点をつけて、各応募作品の特徴と評価するポイントを慎重に議論しました。本年度は、少ない応募数でありながら、極めて質の高い建築作品が集まり、審査員が全員一致して、以下の2作品を「建築作品・新潟県賞」に値する建築作品であると高く評価しました。
 建築のコンセプト・建築の造形・平面計画・空間の質・デザインの新規性・周辺環境との関係・構造の合理性・耐震性能・材料・ディテール等、多くの視点からの評価を積み重ねて選ばれた2作品は、以下です。

 最優秀賞「YGD/越後薬草蒸留所」(株)東海林健建築設計事務所(現在:(株)EA一級建築士事務所)
 優秀賞「未来へつなぐコア Hug&peace」(株)高田建築事務所

 残念ながら、選外となった作品も、子供の学びの場を合理的な平面計画からデザインした作品、病院の多くの機能・諸室をひとつの屋根でまとめ上げた作品、生徒のふれあいを作り出す大きな階段を中心に構成された学校など、新潟県の設計事務所がもつ高い建築デザイン力を実感させられるものでした。さらに、新潟に優れた建築作品が生まれていく希望を強く感じました。
 今年度の日事連建築賞への推薦作品は、小規模建築部門(延面積が1,000㎡以下の建築物:戸建住宅を含む)に「YGD/越後薬草蒸留所」(株)東海林健建築設計事務所(現在:(株)EA一級建築士事務所)となりました。
 以下に、受賞された建築作品への講評を記します。

最優秀賞 YGD/越後薬草蒸留所 株式会社 東海林健建築設計事務所
(現在:(株)EA一級建築士事務所)
優秀賞 未来へつなぐコア Hug&peace 株式会社 高田建築事務所

建築作品講評

最優秀賞

YGD/越後薬草蒸留所

株式会社 東海林健建築設計事務所(現在:(株)EA一級建築士事務所)

 大地の揺らぎが4つの角をかたちづくり、そこを基壇にして薄いアーチが四角い箱を持ち上げている。新潟県の上越市、野草酵素の食品を製造する敷地に隣接した、クラフトジン製造の為の蒸留所である。四角い箱の中は、背の高い空間が、ジンの蒸留器を包む。その上には、四方の自然を見渡すことが出来るルーフテラスラボが、銀色の天井に反射した光で満たされている。工場としての機能と、新潟でジンを製造する夢とが重なって、極めて巧みな建築造形が想像されている。四角い外壁にまだらに残るリブが、自然の多様さを伝え、どの部分のデザインも、この場所とこの形を生かす力となっている。極めた質の高い建築作品であると高く評価された。そして、基底部のアーチは、エーロ・サーリネンのように、エッジの切れたデザインを感じさせてくれる。

優秀賞

未来へつなぐコア Hug&peace

株式会社 高田建築事務所

 新潟に残る伝統的農家の田の字型平面を、現代の生活に移す意欲的な試みである。入り口に「土間」を横長において、その奥に、家族の団らんの場であるキッチン・ダイニング・リビングを繋げている。子供達の遊ぶ空間や寝室をさらに奥に配置して、それらを大きな屋根が包んでいる。トネリコの床も気持ちよさそうである。様々な活動が展開する土間を通して、家族の生活がつながっていくことを周到に計画し、気持ちのよい住宅にまとめ上げた優れた建築作品であると高く評価された。